前の章では、「トンデモ科学」とはどういうものかを説明しました。しかし、科学的知識の少ない人はトンデモ科学を見抜くのは難しいと思います。それはやはり「
どこがどのように間違っているか」
を正確に見抜くことが出来ないことが原因であると思います。実は、
「どこがどのように間違っているか」は、その理論に対する最低限の知識さえあれば、大半は分かります。専門的知識は必要ではないのがほとんどです。
（ほんの一部では必要なこともありますが・・・）
この章では、トンデモ科学の主張がどのように間違っているかを場合分けして説明したいと思います。
まず多いトンデモ科学の主張の間違いの一つには「言ってないことを勝手に持ち出して反論する」
というのがあります。大雑把に言うと「他の理論ではではこうなるはずだから」みたいな論法です。
まぁ、よく考えなくても何がいけないか分かりますよね。
例えば、反相対性理論の人でよく言われることで
「相対性理論ではどんなスピードで等速直線運動している人でも見える光の速さは一定値cだと言っているが、光源に対して速度vで遠ざかっている人から見たら、光の相対速度はc-vになるではないか！よって相対性理論は間違っている！」
みたいなことがあります。
どこがおかしいのか分かりますか？
相対性理論ではそもそも、「光源に対して速度vで遠ざかっている人から見たら、相対速度はc-v」なんて
一言も
説明して無いし、そんな実験データもありません。（調べればすぐに分かります）相対速度はc-vになるのは相対性理論とは「異なる理論」である「ニュートン力学」の考え方で、相対性理論に対してなんら自己矛盾を示すものではありません。主張した人が勝手に「他の理論ではこうなるはずだから」と相対性理論にも勝手に適応しただけです。
かなり簡単で分かりやすいたとえ話をすると
「みんなでサッカーをして遊んでいると、突然一人がキーパーでもないのにボールを手に抱えて走り出した。みんなで注意すると、『だってラグビーではボールを手に持って走ってるよ！だから別に反則ではない！』と言い張って聞きません。」
みたいな話です。他のスポーツのルールを持ち込んだらいけないことは分かりますよね。
理論が「正しくない」というには、「その理論の自己矛盾を導く」か「その理論では説明できない自然現象」のどちらかを示す必要があります。「異なる理論との矛盾」を示したところで、何の証明にもなっていません。
別のトンデモ科学の主張の間違いの一つには
「理論を間違って解釈する」
というのがあります。「（自分の考えでは）こうなるはずだから」みたいなものです。
こっちもたとえ話をすると
「みんなでサッカーをして遊んでいると、突然一人がボールを持ったキーパーに対して怒りだしました。理由を聞くと『だって、サッカーは「ボールを手で触ったらだめ」っていうルールがあるじゃないか！反則だ！』と言い張ってます。キーパーはボールを触ってもいいことを説明しても聞いてくれません。」
みたいな話です。ルールは正しく理解しましょう。
トンデモ理論の主張する理論・反論の大半は、上記の2つのどちらかに属しています。
トンデモ理論を主張する人のほぼ全ては、これらの「基本的なこと」を理解していないことによる勘違いによるものです。
上記から自分の言いたいことは、「ある理論の言っていることと言っていないこと」を正しく理解すれば、大体のトンデモ理論は見抜くことが出来るということです。理論を専門的に詳しくは知らなくてもいいです。
基本をしっかり固めてください。
そして自分でおかしいことを考えて、判断出来るようにしてください。そうすれば、トンデモに騙されることはなくなるでしょう。
他のトンデモ理論の主張では、思考実験を持ち出して、理論を批判するものがあります。
思考実験は、誰にでも、実験設備が無くても、ある程度の知識があれば出来るものです。
しかし「ある程度の知識」がある人に限ってです。
思考実験の前提として上記のような間違いをしてしまうと、正しい結果が得られないこと
なんて自明でしょう。
例えると、「相対性理論でも、光源に対して速度vで遠ざかっている人から見たら、光の相対速度はc-vとなる」という仮定で思考実験することは出来ます。しかし、間違った仮定の下での結果は何の役にも立ちませんし、何も証明できません。だって、「実際にそんなことは起こらない」んですからね。
よって、思考実験をする場合は
「思考実験で得られた結果は、現実でも本当に起こる」ことを実験で証明
しないといけません。結局、実験しないとダメなんです。思考実験単体では、基本的に何も証明できません。
大体この程度をよく分かっていれば、実際に「トンデモ科学理論は信用するに値しない」ことは分かっていただけると思います。次の章からは、実際に「相対性理論は間違っている」と主張するサイトを例に挙げて、反論していきたいと思います。